不登校生の高校受験と内申点という怪物
2021/12/13
この時期になると、中学1・2年生の不登校生からの問い合わせが多くなります。
保護者としても、「そろそろ動いてもらわないと困る」としびれを切らす時期なのでしょうか。
どうしても高校受験があるので、焦る気持ちが大きくなるのは仕方のないことでしょう。
不登校生が高校受験する時に、「中学の内申点」がまるでバケモノのように語られることがあります。
中学生本人も、その保護者も何となく聞いたことがあり、不登校期間が長くなるにつれて気持ちを圧迫するキーワードです。
これを話題にすると、なんだか愚痴っぽくなってしまいそう…。
内申点とは、要するに学校での成績ですね。
成績表に書いてある各科目5段階評価のあれです。
テスト、提出物、授業態度などを先生が評価したものです。
高校を受験する際に、中学校での成績は内申書(調査書)として纏められ、各生徒が所属している中学校から出願先の高校に送られます。
これが入試の合否にとって大きな役割を果たすわけです。
不登校が長くなると、当然極端に低くなったり、空欄になってしまいます。
しかし、これが受験においてどれくらいデカいものなのか。
中学校に通っていないと、どれくらい不利なのか。
意外と知られていない場合があります。
「中学校の成績が高校受験で必要なのは知っていたけど、でもこれは重すぎるよ…、しんどいよ。」
そんな中学生もいます。
そうだよね。そういえば、案外だれも説明してくれんもんね…。
パーソナルアカデミーは池田市にありますので、関わるのは大阪府と兵庫県の子どもたちがほとんどです。
この地域で公立高校の一般入試を受ける際、調査書はどれくらい重要なものなのでしょうか。
大阪府は学力検査(当日の入試テストですね)と調査書の扱いは学校により異なります。
Ⅰ.900点満点=学力検査630点+調査書270点
Ⅱ.900点満点=学力検査540点+調査書360点
Ⅲ.900点満点=学力検査450点+調査書450点
Ⅳ.900点満点=学力検査360点+調査書540点
Ⅴ.900点満点=学力検査270点+調査書630点
とりあえず確かなことは、一番割合が低いⅠの方式の学校でも、入試の得点の3割は中学の時の成績。
兵庫県は
500点満点=学力検査250点+調査書250点
入試の得点の半分は中学の時の成績。
もうこの時点で、ズーンと重い気持ちになる子どもたちもいます。
とりわけ半年とか、一年間など、長期にわたって不登校だった子どもたちです。
そして、中学校にはもう通いたくない、と思っている子どもたちです。
そういう子たちでも、全日制の公立高校進学が初めから選択肢になかったわけではありません。
中学校では学校に行けなかった分、「高校は普通のとこ行きたい」という子もやっぱりいるのです。
(私としては「普通)というのが引っかかりますが…、今はそれは置いておいて。)
ですから上に書いたような調査書の扱いを伝えると、「えっ?」となる子もいるのです。
「中学校に行けてないのは確かだから、何か不利を受けるのは覚悟していたけれど…、こんなに大きいの?」
「最初からスタート地点にも立たせてもらえないんだ…。」
「中学で不登校になった子は、公立高校には来るなってことなん?」
きっと色んな理由から、こうした制度になっているのでしょうけれど、それでもしんどいものはしんどい。
また、こうしたことが子どもたちへ登校を促す無言の圧力になっているとしたら…。
それもやっぱりつらいのです。
大阪府は、中学校での1年生:2年生:3年間の成績が1:1:3の割合で調査書になります。
兵庫県では、3年生の時の成績のみが調査書になるそうです。
例えば大阪で2年生の一年間を不登校期間で過ごすと、(仮にⅢの方式なら)900点満点中の90点分が減点されるのでしょうか。
例えば兵庫県の子どもたちが、3年生を不登校で過ごすことは、500点満点中の250点を失うということでしょうか。
こう書かれるとやっぱり、すごい圧力を感じてしまいます。
親が、「行きなさい。」
本人が「行かなきゃダメかな?」
もちろん最初から、そういうことを気にしない子もいます。
中学校から私への評価なんて、どうでもいいや、という感じの。
最近では、結構そういう子も増えている気がします。
行ける範囲で私立を探すとか。
通信制や多部制の高校に行っちゃうとか。
大学受験で決着をつけるとか。
色んな進路の選択を、大人以上に柔軟に考えている子だっています。
フリースクールの側としても、内申点とかそういったことを気にしないくらい、みんなに元気になって欲しいと考えています。
でも私はやっぱり、不登校の子どもたちに内申点の話をするのは、ちょっと気が重いんです。
学校へ行けって言ってるわけではないんだよ!
別にあなたの価値が損なわれたわけじゃないんだよ!
そんなことより、もっと大事なことがたくさんあるじゃない!
いつもそう伝えようとするのですが…、なんだかな。
今回はやはり愚痴っぽくなりました。