不登校で夫婦の意見が合わないとき――家庭の安心を守るために、まず合意したいこと
2026/07/22
不登校で夫婦の意見が合わないとき
家庭の安心を守るために、まず合意したいこと
不登校で夫婦の意見が合わないとき――家庭の安心を守るために、まず合意したいこと
目次
1. はじめに ―― お子さんを見守りながら過ごすお母さんへ
2. 父親の言動の背景にあるもの、ただしすべてがそれでは説明できないこと
3. まず合意すべきは「登校させるか」ではありません
4. 背景要因は、家庭の温度差だけではないかもしれません
5. 緊急性・安全性の判断を、最優先してください
6. お子さん本人の意思とプライバシーを、まず確認する
7. 事実の共有は、母親だけが担わなくていい
8. 第三者に相談するという選択
9. 父親に役割をお願いするときも、本人の希望が起点です
10. 接触時間の調整は有効ですが、暴言・暴力とは分けて考える
11. 出席の扱い・学びの選択肢について知っておく
12. 相談できる窓口一覧
13. よくあるご質問(Q&A)
14. まとめ ―― 母親一人を「最後の砦」にしないために
1. はじめに ―― お子さんを見守りながら過ごすお母さんへ
中学1年生の5月の終わり頃から、なんとなく学校に行き渋るようになり、夏休みが明けても動けないまま、気づけば中学2年生になっていた。
そんなお子さんを見守りながら、毎日を過ごしていらっしゃるお母さん、本当にお疲れ様です。
朝、仕事に出かける前、布団から出てこないお子さんを見るたびに胸が締め付けられ、職場では平気な顔で気を
張って過ごし、夜、クタクタになって家に帰る。
本来、家は一番心が休まる場所であるはずなのに、今のお母さんにとっては、家の方が緊張を強いられる場所になってしまっているかもしれません。
学校との連絡、担任の先生とのやり取り、スクールカウンセラーの予約、フリースクールの情報収集、お子さんの食事や生活リズムの管理、そしてご自身のお仕事――そのすべてを、ほとんどお母さんひとりで回してこられたのではないでしょうか。
そして、ふと気づくのです。
「あれ、お父さん、この一年、何をしていたのだろう」、と。
文部科学省の調査でも、不登校児童生徒数は年々増加傾向にあることが示されており、専門的な相談や支援につながっていないケースも少なくないと指摘されています。
この背景が示しているのは、「お子さんへの対応」だけでなく「保護者間の意見の食い違い」に悩むご家庭が、決して少なくないという事実です。
もしこの記事を読んで「これは私のことだ」と感じられたなら、まずお伝えしたいのは――**夫婦の意見をすぐに完全に一致させる必要はない**ということです。大切なのは、もっと手前にある、別の合意なのです。
2. 父親の言動の背景にあるもの、ただしすべてがそれでは説明できないこと
ご相談で本当によく伺うのが、こういったお父さんの言葉です。
「いつまで休ませるんだ」
「お前が甘やかすからだ」
「中2になったんだぞ。高校受験はどうするつもりだ」
「無理にでも引っ張って行かせろ」
仕事から帰ってきて、ただでさえ心身ともにすり減っているところに、こんな言葉を投げかけられたら、お母さんはどうしていいか分からなくなってしまいますよね。
「私が悪いの?」「私だって、どうしたらいいか分からないのに……」
不登校支援の現場では、こうした言葉の背景に、お子さんの将来への不安や、不登校に関する情報の少なさが影響しているケースが語られることがあります。
ただし、これはあくまで一つの見方であり、すべての父親に当てはまるものではありません。
不安からくる言動と、そうではない言動は、分けて考える必要があります。
特に、次のようなケースは、「不安の裏返し」として説明することが適切ではありません。
- 怒鳴る、威圧するなど、言葉や態度が繰り返し激しい
- 力ずくで学校へ連れ出そうとする
- お子さんやお母さんへの継続的な非難・支配的な言動、あるいは身体的な暴力がある
このような言動が継続している場合、それは通常の夫婦間コミュニケーションの改善で対応できる範囲を超えている可能性があります。
この場合は、お父さんとのコミュニケーション改善を試みるより先に、お子さんとお母さん自身の安全確保を最優先とし、児童相談所や配偶者暴力相談支援センター、警察、弁護士といった公的・法的な専門機関へ相談してください。
3. まず合意すべきは「登校させるか」ではありません
ご夫婦の意見が食い違うとき、多くの方が「登校させるべきか、休ませるべきか」という一点で対立してしまいます。しかし、まず合意すべきなのは、実はそこではありません。
まず合意していただきたいのは、次の一点です。
お子さんを怒鳴る、責める、力ずくで連れ出すといった対応は避け、家庭内の安心を守る。
登校の判断は、お子さんの状態や背景によって大きく異なり、すぐに一致させられるものではありません。
しかし、「家の中でお子さんが怖い思いをしない」という一点は、立場の違いを超えて合意しやすい土台になります。
この土台さえ共有できれば、「今すぐ答えを出さなくていい」という安心感が、ご夫婦の間にも、お子さんとの関係にも生まれてきます。
4. 背景要因は、家庭の温度差だけではないかもしれません
ここで、一つ大切なことをお伝えしなければなりません。
不登校の背景には、家庭内の温度差だけでなく、次のような要因が単独または複合的に関わっていることがあります。
- いじめや友人関係のトラブル
- 学習面のつまずき、学習障害
- 発達特性(ASD・ADHDなど)や感覚過敏
- 起立性調節障害などの心身症、うつ、不安障害などの精神的な状態
- 家庭内の他の問題
家庭の温度差ばかりに注目してしまうと、本来必要な医療的・心理的な評価や支援が遅れてしまう可能性があります。
「両親の関わり方を整えれば解決する」と決めつけず、まずはお子さんの状態そのものを、専門家と一緒に見立てていくことが欠かせません。
5. 緊急性・安全性の判断を、最優先してください
次のようなサインが見られる場合は、家庭内の話し合いや通常の相談よりも先に、安全の確保と専門機関への相談を最優先してください。
- 自傷行為や、「消えたい」といった希死念慮を感じさせる言動
- 深刻な拒食・過食、極端な不眠
- 家庭内での暴力(お子さんへの、あるいはお子さんからの)
- 虐待が疑われる状況
- 表情が乏しくなり、呼びかけへの反応がほとんどないなど、深刻な抑うつ状態
このような状態が見られるときは、フリースクールへの相談よりも先に、医療機関(児童精神科・小児科)、地域の児童相談所、精神保健福祉センター、いのちの電話などの緊急相談窓口に、まず連絡してください。
フリースクールなどの学びの場は、安全が確保された後に検討する選択肢です。
6. お子さん本人の意思とプライバシーを、まず確認する
これまで、「お父さんに事実を伝える」「お父さんに役割を持ってもらう」という関わり方について語られることがありますが、その前に、一つ大切な確認が必要です。
お子さんの様子を父親と共有する前に、年齢に応じて、本人の意向を確認してください。
「お父さんに、今日の様子を伝えてもいいかな?」
「お父さんと少し話す時間を作ってもいい?」
このように、まずお子さんに聞いてみることが、本人の尊厳を守る第一歩になります。
良かれと思って共有した情報が、お子さんにとっては「監視されている」「知られたくなかった」という新たな負担になることもあります。
同様に、「お父さんと一緒にゲームをする」「ドライブに連れ出す」といった関わり方も、お子さんが望んでいなければ、新たな圧力になりかねません。
父親に何らかの役割をお願いする場合も、お子さん本人がどう関わってほしいかを起点にしていただきたいと思います。
7. 事実の共有は、母親だけが担わなくていい
お子さんの様子を、評価や解釈を交えずに共有すること自体は、父親の理解を助ける一つの方法として語られることがあります。
ただし、これを含め、「事実を伝える」「第三者に連絡する」「父子関係を調整する」といった役割のすべてを、母親だけが担う必要はありません。
- 学校の先生やスクールカウンセラーから、父親へ直接説明してもらう
- 教育支援センターの相談員に、夫婦同席での面談を依頼する
- フリースクールのスタッフから、父親向けに個別に状況を伝える機会を作る
こうした形で、母親の「翻訳係」としての負担を、周囲の支援者と分け合うことができます。
第三者から客観的に伝えられることで、父親側の受け止め方がスムーズになるケースもあります。
「母親が一人で抱えない」という結論を大切にするためには、情報共有の作業そのものも、母親一人の役目にしない設計が必要です。
8. 第三者に相談するという選択
保護者だけで解決しようとせず、次のような第三者に相談することは、状況を整理する上で有効な選択肢の一つです。
- 学校(担任・スクールカウンセラー)
- 教育支援センター(適応指導教室)
- 自治体の子育て・教育相談窓口
- 児童精神科・小児科などの医療機関
- フリースクールなどの民間の相談窓口
第三者からの客観的な言葉に、当事者同士では届かなかった理解が生まれることは、支援の現場で語られることがあります。
ただし、これは「特効薬」ではなく、状況やご家庭によって効果の出方は異なります。一度の相談で変化が見られないこともありますが、それは珍しいことではありません。
9. 父親に役割をお願いするときも、本人の希望が起点です
父親に何らかの関わりをお願いしたいとき、「何もしないで見守る」ことも、一つの関わり方として大切です。
ただし、繰り返しになりますが、「ゲームに付き合う」「外出に誘う」といった関わり方を一方的に提案するのではなく、必ずお子さんに「そういう関わり方は望んでいる?」と確認してから、父親に伝えていただきたいと思います。お子さんが望まない関わりは、良かれと思ってのことであっても、負担になり得ます。
10. 接触時間の調整は有効ですが、暴言・暴力とは分けて考える
夫婦間の緊張が強いときや、お子さんが父親と過ごす時間に苦痛を感じている場合、生活の中で接触する時間を調整することは、一つの選択肢として有効です。
たとえば、食事の時間を少しずらす、在宅時間帯を分けるなど。会話の衝突が避けられない場合は、お子さんの話題以外の何気ない雑談に留めるなど、一定の心理的距離を置くことも自己防衛の一つの工夫です。
これは「逃げ」ではなく、お子さんとご自身が安心して過ごせる時間を確保するための工夫です。理想の家族像は、お子さんが回復してから、また、ゆっくり取り戻していけばいいのです。
ただし、これはあくまで一時的な緊張緩和のための工夫であり、暴言・威圧・暴力といった状況への対応とは、明確に分けて考える必要があります。
そうした状況がある場合は、接触時間の調整だけでなく、5章で触れた安全確保と専門機関への相談を優先してください。
11. 出席の扱い・学びの選択肢について知っておく
受験や進路への不安を和らげるには、精神面のサポートだけでなく、制度面の情報を知っておくことも助けになります。
出席の扱い:文部科学省の指針に基づき、一定の条件を満たす場合、教育支援センターや要件を満たした民間のフリースクールでの活動、ITを活用した自宅でのオンライン学習などが、学校長の判断によって指導要録上の「出席」として扱われることがあります。
教育支援センター(適応指導教室):自治体の教育委員会が運営する、学校以外の学びの場です。通所が出席扱いとなる場合もあります。
不登校特例校(学びの多様化学校):不登校の児童生徒の実情に配慮した特別なカリキュラムを持つ学校です。
進路の選択肢:高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)、通信制高校、単位制高校への進学、高校の転入・編入など、中学校の成績にかかわらず多様な進路が用意されています。
医療機関との連携:背景に医療的な要因が疑われる場合、学校・フリースクールと医療機関が連携しながら支援を進めることもあります。
これらの制度は自治体や学校によって運用が異なるため、詳細は在籍校やお住まいの自治体の教育委員会に確認することをおすすめします。
12. 相談できる窓口一覧
ご家族だけで抱え込まず、外部の多様な相談先とつながることで、問題解決の糸口が少しずつ見えてきます。
- 学校のスクールカウンセラー:学校生活や家庭での様子について、守秘義務のもとで相談できます。
- 自治体の教育相談窓口・教育支援センター:出席扱いや進路についての公的な情報を提供しています。
- 児童精神科・小児科:心身の不調、発達特性の評価、緊急の治療が必要な場合の医療窓口です。
- 精神保健福祉センター・児童相談所:心身の健康や家庭内の深刻な対立、安全確保について、専門的・福祉的な観点から相談を受け付けています。
- 配偶者暴力相談支援センター・警察・弁護士:家庭内の暴力や威圧的な言動が継続している場合の相談先です。
- フリースクールなどの民間の相談窓口:学びの場の情報や、保護者向けの相談を行っています。
パーソナルアカデミーでは、お子さんが「自分のままでいいんだ」と安心して過ごせる居場所づくりとともに、それぞれの希望する進路に向けた個別の学習サポートを行っています。
また、不登校のお子さんを支えながら日々を過ごされている保護者の方のための個別相談にも力を入れています。
夫婦間の関わり方や、ご家庭での対応、出席扱いのご相談など、どのようなことでも構いません。
私たちは、そうした公的な相談先の一つとして、お子さんとご家族の歩幅に合わせて、いつでもお話を伺える場所であり続けたいと考えています。
ご相談は、お母さんおひとりでも、もちろん構いません。
13. よくあるご質問(Q&A)
Q. 夫が相談に一切協力してくれません。どうしたらいいですか?
A. まずは「父親を変える」ことを目標にせず、学校やスクールカウンセラーなど、第三者から父親へ直接説明してもらう機会を作れないか、相談してみることをおすすめします。
Q. 夫婦で意見が合わないまま、子どもは大丈夫でしょうか?
A. 両親が揃って理解を示せることが望ましい一方、まず大切なのは「お子さんを怒鳴らない、責めない」という最低限の合意です。
そのうえで、母親だけでなく、複数の支援者がお子さんを見守る体制を整えていくことが助けになります。
Q. 父親の言動が厳しく、家庭内で怖い思いをしています。どうすればいいですか?
A. その場合は、夫婦間の温度差の問題として扱うのではなく、安全確保を最優先してください。児童相談所や配偶者暴力相談支援センター、必要に応じて警察への相談も選択肢です。
Q. フリースクールへの相談は、父親の同意がなくても大丈夫ですか?
A. まずお母さんおひとりでの相談も可能です。状況を見ながら、学校や教育支援センターなど他の相談先と並行して検討していただくことをおすすめします。
14. まとめ ―― 母親一人を「最後の砦」にしないために
「夫が変わってくれないと、子どもが安心して家にいられないんです」
そのお気持ちは、多くのお母さんが抱えていらっしゃるものです。ただ、一つだけお伝えしたいことがあります。父親を変えることを、唯一のゴールにする必要はありません。
まず合意すべきは、登校させるかどうかではなく、お子さんの安心を守ること。そのうえで、背景にある要因を丁寧に見立て、緊急性があれば安全確保を最優先し、事実の共有や第三者への相談は、母親一人ではなく、周囲の支援者と分担していく。
母親を「最後の砦」に固定するのではなく、支援者を増やし、母親自身の休息と相談先も確保することが、結果的にお子さんの安心につながります。
もし今、「これは我が家のことかもしれない」と感じられたなら、学校、スクールカウンセラー、教育支援センター、自治体の相談窓口、医療機関など、公的な相談先も含めて、まずは話しやすいところから、一歩を踏み出してみていただきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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